ビジネススーツを上品に着こなすことを意識しだしたのは、50歳近くになってからです。
今でこそ常時着用するスーツは5着で、毎日替えて着用していますが、20代の頃は1着を着回していました。
スーツを複数購入するだけの経済力がなかったのもありますが、一番の理由は
”外見なんてどうでもいいのだ!人間は中身が大事なのだ!”
という、青臭い若気の勢いとでも言いましょうか、思い上がりとでもいいましょうか。
これ見よがしにブランドスーツを着こなす同僚、ブランドの腕時計をわざと見えるようにチラチラさせている同僚を苦々しく、
「チャライ野郎だぜ!」
などと、鼻で笑っておりました。
そんな自分には、中身もなければ外っ面すらもなかったのですけどね。
よく先輩や上司に言われました。
「おまえ、もう少し着るものくらいちゃんとしろよ」
よっぽど見すぼらしく見えたのでしょう。
40代を過ぎた頃でしょうか。
会社で仕事をしていると見知らぬ内線番号から連絡が来たことがあります。
出ると社長でした。
「ちょっと来い!」
の一言に、いったい自分は何をやらかしたんだっけ?
と、あまり心当たりが多すぎて、ヒヤヒヤ社長室に向かいますと、
社長はテーブルに自分の着古したスーツを何着も並べて待っていて、
「これ、全部持ってけ」
と仰ってくださったのです。
どれもみな、舶来品でした。
それから、まじまじと私の姿を見て、おもむろにネクタイの曲がりを直してくれたのでした。
女の子にだってされたことないのに…。
どれだけ見すぼらしく見えていたのでしょうか。
本音を言えば、着古したたくさんの古着より、新しいもの1着くれても良かったような…。
社長からスーツを貰ったことで意識が変わろうはずもありませんでしたが、50代になってようやく外見を気にするようになってきました。
『人は見た目が9割』(竹内一郎ー新潮新書)を読んでストンと腑に落ちたのもあります。
(この著書では外見が大事と言っているのではなく、言葉遣いや立ち振る舞いが大事と言っている)
外見から与える印象の大切さを意識するようになっていきます。
50代にして所有しているスーツの内訳は、スリーピースが2着、ツーピースが3着。
スリーピースのベストは主に冬~春先にかけての季節限定にはなりますが、本当は年中着用したいお気に入りのアイテムです。
スーツのベストを着ていいのは、大門軍団のデカ達だけだと思っていた自分が、まさか着るようになるとは思いもよりませんでした。
とはいえ、舶来品のスーツというわけには行きませんね。
舶来品を着るには、”社長”になるしかありませんね。
腕時計もまさかのブランド「SEIKO」を身に着けるまでになりました。
自分の事ながら、成長したものです。
50代のビジネスシーンで気が付いたこと。
それは、
”安心感を求められている”ということ。
仕事の進め方、話し方、立ち振る舞い、見た目。
全てにおいて特別な物は何もいらない。
「この人に任せておけば安心」「この人と一緒にいれば安心」
そんなものを求められている気がします。
中味も大事。それらを表に出すための見た目も大事なのでしょう。
でも、内心は…
ハラハラ、緊張、脂汗、なんですけどね。