靴下に穴が開いたらどうしてますか?
子供の頃は貧乏だったので、そのまま履いていましたが、大人になった今となっては、そうもいきません。
世間では、
”掃除道具として使う”
”うまく繕って履き続ける”
”穴が開いても履き続ける”
とかとか、様々な活用法(履き続けるのが活用かどうかは別として)を実践されているようですが、大半の方は、潔く捨てるのではないでしょうか。
その方が手っ取り早い。
加えて言うなら、”靴下を作って売って給料を貰っている人もいる”のですから、”経済を回す”意味でも、捨てることは大事なことだとは思います。
私の場合はどうしているかというと、
”きれいに洗って冬を待つ”
です。
そして、冬になったら防寒対策として靴下の2枚重ね履き、その内履きにします。
間違っても外履きにはしません。
日頃のビジネスシーンで、靴下を見せることはまずありませんが、万が一にも和風料亭でランチ接待なんてこともないとも言えません。
そんな時、靴下の穴からもう一枚の靴下が顔を出しているなんてことは、50代のビジネスマンとしては恥さらしどころか、破廉恥とも言えます。
なので、穴の開いた方は内履きが鉄則です。
この靴下2枚重ねは、防寒としては厚手の靴下をはるかにしのぎます。
何と言っても、2枚重なっているので、空気の層がある。この層がとかく冷たくなりがちな下肢末端の体温を逃さずに保ってくれるのです。
これは私の実体験ではありますが、きっと間違いありません。
穴の開いた靴下。
あえて靴下君と名付けましょう。
彼は、少々くたびれ感の出てきた50代のおやじサラリーマンのもとにやってきました。
果たして原産国はどこだかは知りませんが、イトーヨーカドーの靴下売り場で、50代おやじサラリーマンの手に取られたのです。
もっと言えば、平均年収より低いサラリーマンのおやじの手に取られたのです。
このおやじの年収がもう100万でも多ければ、きっと靴下君とおやじは出会わなかった。
だけど、私たちは出会ったのです。
そして、散々履きつぶされた挙句、彼は擦り切れ、やがて穴が開きました。
おやじの記憶が正しければ、2年近くの間、週に一度のペースで靴下君は必ず履かれた。
履かれ、履かれて、履かれ続けて、その役目を全うして、ささやかな人生を生き尽くして終わろうとしていたのです。
でもね、靴下君。人生は長いよ。
まだ終わっていない。終わるべきではない。穴が開いても、生地が薄くなっても、まだ君には役目がある。
表舞台からは下りるかもしれないけれど、まだまだやるべきことはあるはずだ。
とまあ、体よくおだてられながら、内履きという裏方に回って、冷たいおやじの足を温める役目を負わされるのです。それでもなお靴下君は、与えられた役割を果たすべく、ただそれだけのために生き続けるのです。
褒める者はいない。称える者もいない。いつ捨てられても文句すら言わない。ただ、自分の役割だけを愚直に果たすだけ。
靴下君、君はすごいよ…
なんだか、人の人生のようではありませんか。
なんてこと、年中考えているわけではありませんが、私の箪笥の引き出しには、無数の穴の開いた靴下君たちが、冬はまだか? 出番はまだか?と整然と並んで待ち構えているのであります。
というような話を、酒の席で半ば冗談交じりに本気で話していたら、聞いていた知人は
「新しいの買えよな」
の一言で、話題を変えていきました。
つまんねえヤツだぜ…。